母親未満-『フローズン・リバー』
去年『母なる証明』という凄まじい映画を観た。題名からもわかる通り母親映画である。『フローズン・リバー』も母親映画なのであるが微妙に違う。『母なる証明』は母親の息子への底なしの愛情が描かれている。それに対して『フローズン・リバー』は立派な母親になりたいシングルマザーの映画であった。言わば母親未満なのである。
映画には二人の母親が登場する。ギリギリの経済状況に追い込まれた一家の母と義理の母に自分の子供を奪われ保留地でトレイラーハウスに住む母。どちらも自分の生活さえままならない母親未満である。彼女らは密入国の手伝いをして金を稼ぐ。しかし真に欲するのは金ではなく、それを通して得られる「母親として子供に注ぐことのできる愛情」のように思えた。
母親として生きることのやり直し。パキスタン人夫婦の子供の命に触れることにより、その気持ちは一層強くなる。そして最後の決断。母親として生きるには何がいるのか、自分の幸せと子供の幸せ、そして他者の幸せ。凍った川を見つめながら決断する主人公に圧倒されます。
- 出版社/メーカー: 角川映画
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