僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

予測不能!『マクナイーマ』

『マクナイーマ』鑑賞。

ブラジルで1969年に公開され大ヒットした映画『マクナイーマ』を観てきました。トロピカルでサイケデリックな色彩世界の中で、不条理でグロテスクそして社会風刺を盛り込んだアンチ・ヒーローの物語が繰り広げられます。

アマゾンの密林に響き渡る産声。生まれ出でしは、なんと黒人の中年男の姿をした赤子。不吉を意味する“マクナイーマ”と名づけられたその赤子は、あるとき魔法の泉の水を浴びて美しい白人の青年に変身する。さっそくアマゾンを抜け出し、兄弟たちとともに都会へと出かけたマクナイーマ。しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは奇想天外な珍事奇談の連続であった・・・。

まず映画冒頭で老婆(明らかに男)から黒人の中年男が生まれます。ここでもうガツンと一発脳みそをやられてしまいました。そんな「何でだよ!!」とツッコミたくなる予測不能の展開は映画の終わりまで続きます。とにかく何も考えずに映画に身を委ねる。そんな見方がオススメです。このマクナイーマと呼ばれる男はとにかく酷い奴で金と女が大好きなんですね。そして兄の嫁の股間から出てきた煙草(みたいなの) を吸うと白人のハンサムな王子様に変身します。ハンサムになったマクナイーマは嫁と遊ぶのですがそれが兄にバレて嫁は追放されてしまいます。とにかくこの白人マクナイーマは出てくる女全員と寝まくっていました。ハンサムとか言われていたけど顔そんなかっこ良くないよ!!でも女と遊びまくるマクナイーマ純粋に羨ましかったなぁ・・・。

一番分かり易かった社会風刺は人種差別でした。黒人として生まれたマクナイーマが白人になってからヒーローを目指すというストーリーがモロにそうですし、他に分かり易い台詞で「白人が走っていればアスリート、黒人が走っていれば泥棒。」なんていうのもありました。それと人を食う金持ち夫婦や人食い人魚など人間を食うという台詞や場面がやたらと出てきました。いろんな人の『マクナイーマ』についてのブログで言われていたことなのですが、1960年代にブラジルで起こったネオトロピカリアというカルチャー革命と関係があるという事でした。ネオトロピカリアは音楽、アート、文学、演劇から政治まで、あらゆる事象の捉え方をアップデートすることを促す運動だったそうです。具体的にはブラジルを植民地として搾取してきた西洋文化を逆に呑み込み、それを血肉化することによって自分達の文化的基盤をつくりあげるという行為で、つまり貪欲にあらゆる文化を食い尽くすということらしいです。この文化を食うという行為が食人のモチーフになっているのかなと思いました。

映画館で観ることがめったにできない作品だと思うので観られて良かったです。

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