僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

真面目に考えてしまう男-『シリアスマン』

今月には新作『トゥルー・グリッド』が公開されるノリに乗っているコーエン兄弟の『シリアスマン』を鑑賞しました。本作はアカデミー賞の作品賞にもノミネートされたそうです。ジョージ・クルーニーブラッド・ピットジョン・マルコヴィッチなどの有名俳優が出演する前作『バーン・アフター・リーディング』とは対照的で『シリアスマン』に出演する俳優は観たことない人ばかりで、映画の一つの側面であるユダヤ人コミュニティーという題材から本物のユダヤ人を多く起用したそうです。しかもラリーの子供2人いたってはどちらも映画初出演らしいです。初出演がコーエン兄弟かぁー・・・うらやま!!

1967年、アメリカ中西部郊外にマイホームを構えるラリーは、平凡で真面目なユダヤ人。しかしラリーの家族はそれぞれ秘密や問題を抱えており、彼自身にも思わぬ災難が降りかかる。勤務先の大学では学生にワイロを渡され、家では妻から離婚を迫れられて大ショック。困り果てたラリーは地元コミュニティーの賢者であるラビの教えを請おうとするが、まるで彼の人生を根こそぎ吹っ飛ばすかのように、さらなる巨大な不運が襲ってくるのだった・・・・・・!(チラシより抜粋)

『ファーゴ』の狂言誘拐、『ノーカントリー』の殺人鬼アントン・シガーなどコーエン兄弟の今までの映画と比べるとやや小さめの問題ばかり。離婚・ワイロ・風呂ばっか入っている叔父さん・連日TVアンテナを直せという息子などの小さい問題がちまちまと起こります。TVぐらい自分でなんとかしろ!!こうした小さい問題が積み重なって後半になるにつれボディブローになり滑稽な悲喜劇へとなっていきます。コーエン兄弟で取り扱うにしては小さい問題なのですが、私たちの人生で考えると実際に起こりうる問題ばかりで隣の家の境界線とかあるあるーと思わせられました。そんな数々の問題に直面するラリーに共感させるのではなく、少し斜め上の目線で見せて喜劇にしているのが上手かったです。

私は題名である『シリアスマン』は真面目に生きてきた男というよりも“真面目に考えてしまう男”という印象でした。ラリーは賢者のラビに数々の問題を「やりすごす方法ではなく解決してほしい!」と訴えます。この台詞に自分はそういえば人生におけるムカつく上司やうるさい隣人などの問題を解決したことはあったのか、なんならそした数々の問題を解決した試しは一度もなくやりすごしてきたかもなぁーと思いました。人間の結末は誰だって死であり私達が今生きている部分は過程であるなんて話を耳にしますが、この映画で登場する数式の“分からない”という解こそが過程である人生を言い表していると思います。本当にシリアスになるべきラストシーンがかっこよかったです。

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