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僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

遠くで、近くで、すぐ傍で-『劇場版神聖かまってちゃんロックンロールは鳴り止まないっ』

『SRサイタマノラッパー』の入江悠監督の新作『劇場版神聖かまってちゃんロックンロールは鳴り止まないっ』を鑑賞しました!本作はテン年代のカリスマバンドと呼ばれる“神聖かまってちゃん”の名曲群をモチーフとした群像劇であり、また人が繋がっていくツールとして劇中にニコニコ動画YOUTUBEiPhoneなどが登場するのも印象的です。

プロの棋士になるという夢と、周囲のギャップとに悩む女子高生。昼は清掃員、夜はショーパブダンサーとして朝から晩まで働くシングルマザーと神聖かまってちゃんのネット配信に夢中な息子。バンドの売り出し方について上司から不条理な難題を押し付けられていた神聖かまってちゃんのマネージャー・ツルギ。別々の場所で様々な悩みを抱える彼らとその周囲の人々。そんな彼らのくすぶった心に、あらゆる形で神聖かまってちゃんの歌が着火し、それぞれの物語が一気に走り出す――!

入江悠監督と神聖かまってちゃんの共通点は“届ける”というところです。入江監督の代表作『SRサイタマノラッパー』は埼玉県の田舎町が舞台のラッパーとしてライブを夢見る青年たちの映画で、最初は自分に言うべきことを持たなかった主人公がどん底を経験して初めて自分の言葉を獲得しヒップホップで相手に届けるという姿が感動的でした。そして入江監督は自ら『SRサイタマノラッパー』を持って日本各地を回り、自分の作品(声)が観客に届いていく瞬間を見ていきました。また神聖かまってちゃんも“届ける”ということにこだわっており、ネットでのPV配信・ライブをニコニコ動画でリアルタイムで配信していくというより多くの人に発信していく方法をとっています。神聖かまってちゃんを見ているとネットの発達によってCDが売れなくなった現代で、自分の声をより多くの人に届けるためにネットを中心に活動していくのは自然であるのだなと考えさせられ、そしてそのかまってちゃんがメジャーデビューしたのは大変意味のあることなのだなと思います。だから『SRサイタマノラッパー』で“届ける”ことを描いた入江監督とネット配信で自分の声を“届ける”ことにこだわっている神聖かまってちゃんの相性がとても良かったと思いました。

本作には現在進行形のバンドを扱うことによる説得力というものがありました。例えば保育園の先生が神聖かまってちゃんを聴き入ってしまうシーンがあるのですが、神聖かまってちゃんの楽曲には評価は別れるにせよ聴いてしまう力があるのでそこにリアリティがありました。映画や音楽でできるだけ遠くに届けようとし波及が広がっていく・感染していく様子を物語で描き、そして現在進行形で活動するバンドを題材にすることによって映画や音楽で人を変えることが出来る・人は変われることができるというところに説得力が生まれていてそこにとても感動しました。またその変わり方が自分の目の前にある問題の解決ではなく問題に対して前向きになれるというところも素晴らしかったです。登場する3つの物語はライブシーンの最後まで絡み合うことはなく距離も環境も一緒になることはないのですが、それぞれの届き方は違えど楽曲で一つになっているところが印象的でした。特に将棋決勝戦で鳴っているはずのない音楽が彼女の中に流れている演出がとてもよかったです。顔を合わせる必要のなくなった時代で距離・物理的には離れていても音楽によって個人が繋がっていく描き方がとても現代的であるなと思いました。『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞「遠くで、近くで、すぐ傍で叫んでやる」とはこのことを言っているのだなと初めて分かりました。ただのロックンロール賛歌だと思っていた自分が超恥ずかしい・・・ハズカピ!神聖かまってちゃんのやりたいこと・良さが分かる映画です。映画としてもとても面白かったです!!

SR サイタマノラッパー [DVD]

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友だちを殺してまで。

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