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僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

理想の自分、他人の自分-『ブラック・スワン』

監督ダーレン・アロノフスキー、主演ナタリー・ポートマンの『ブラック・スワン』を公開初日に観てきました!!初日が水曜でレディスデーだったこともあり新宿の映画館は非常に賑わっておりました。ダーレン・アロノフスキー監督の映画にはよく一つの事に囚われた人物が登場します。デビュー作『π』は数式に囚われた男、前作『レスラー』ではプロレスしか人生にない男を主役にし、一つの事に打ち込んだために破滅していく姿をよく描いています。また『レスラー』の全盛期を過ぎて落ちぶれたプロレスラーにミッキー・ロークを起用するなど登場人物と俳優のイメージをわざとリンクさせているのも一つの見所です。『ブラック・スワン』でも優等生のイメージが強いナタリー・ポートマンを主役にして「黒鳥」を踊ることに囚われた女性を描いています。

ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属するニナ(ナタリー・ポートマン)は『白鳥の湖』のプリマに抜擢される。ただし芸術監督ルロワ(ヴァンサン・カッセル)の演出で、純真な白鳥と邪悪な黒鳥との二役を演じなければならなかった。優等生のニナは黒鳥をうまく演じることができず、しだいに精神的に混乱していく・・・。

本作で一番印象に残ったのは主人公ニナを映す鏡でした。鏡は自宅、トイレ、稽古場、また電車の車窓など様々なところで登場しニナの姿を何度も映し出します。僕は鏡の前で化粧を整えたりダンスの振付を磨くことは、自分を自分の理想像へと近づけて行くことであるなと思いました。ニナは鏡の前で何度も理想を作っていくうちにいつしか鏡の前では作られた自分像ばかりが映され本物の自分が失われていったように見えました。またニナは他人が求めている自分像にも答えようとします。特に母親がサプライズでケーキをご馳走するシーンが印象的で、ニナがきちんと喜ばなかった瞬間に母親は態度が急変します。そこでニナは慌てて母親の満足するようなリアクションを取るのですが、こういった行動になるのもやはり母親の思い描く自分像になろうとするからでしょう。ヴァンサン・カッセル演じるルロワも「俺を誘惑しろ!」だの「俺が誘惑してどうする!」だの俺を誘惑するニナ像を押し付けていてかなりめんどくさい奴でした。この人口調は強いのですが、もはやSというよりもドМこじらせている感じがしました。母親の求める自分、また監督の求める自分になろうとしていくうちにニナは鏡の前だけでなく私生活でも自分を失っていきます。部屋に鍵はなくオナニーさえもままならない私生活。なんて可哀想なんだ!それに加え大役を完璧にこなせるようになりたい自分や羽目を外してクラブではっちゃけるのが楽しい自分もいてニナはさらに混乱していきます。

過保護な母親に対して「私はもう12歳じゃないのよ!」と怒りますが大事に育てられ異性や遊ぶ事を知らない彼女は12歳とそんなに変わらないんじゃないのかと思いました。そんな12歳と変わらない女の子が初めて大役を掴み、様々な人達の期待に答えようしていくことで成長していきます。僕はこの成長の部分を本作では分裂と混乱として描いているように思えました。失われたと思った自分、なろうとしていた理想の自分、他人が求めている自分。別々だと思っていた様々な自分が融合し、自分はどこまでいっても自分であると気づいたとき彼女は彼女自身が大きく成長していることを知り、だから嬉しくて笑うのだなと思いました。

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