僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

幽霊が見えた女の子

僕は中学生のとき吹奏楽部だった。吹奏楽部は部員全員での合奏以外のとき、つまり自主練のときは雨が降っていないかぎりは外で練習をしていた。夏場は19時頃までは明るいのだが冬になると17時ごろでわりと真っ暗になる。そんな中練習もせずにいつも同じことを言う女子がいた。その女子は普段は特に目立ちたがり屋というわけでもなく、むしろ地味で静かな子なのだが、彼女は毎日のように校舎のある窓を指差し「あそこに幽霊が見える」と言っていた。

彼女に幽霊が本当に見えていたのかどうかは今でも分からない。ただ最初は火の玉のようなものが見えていたのが、日を負うごとにそれがうっすらと人の形をした何か、髪が長くて白い服を着た女性、腹からはみ出した腸を引き吊りながら歩く化け物と....なぜかだんだんとグレードアップしていった。幽霊のバリエーションが豊富過ぎて、本当に見えているとしたらもう全然忍んでいない。とんだ幽霊カーニバルだ。一番驚いたのは彼女が「吸血鬼が見える」と言ったときだ。僕は怖さを通り過ぎて日本の学校と西洋の吸血鬼という妙な組み合わせに何か新しい可能性を感じた。

そんな彼女の幽霊話に周りの女子は「コワーイ!」だの「キャー!」だの叫んでいた。何が怖いだ。普段本人のいないところで「絶対あの子クラスで暗くて、せめて部活では注目されたいから幽霊が見えるとか言ってんだよ!」とか悪口を言ってくるお前らの方がよっぽど怖い。そんなロクに練習もしなかった僕の吹奏楽部は弱小で地方大会ではもちろんいつもビリだった。弱小であっても負けた時はやはり悔しくて中には泣いてしまう子とかもいたのだけど、翌日には僕らはケロッと忘れて幽霊の話をしていた。