僕はDay Dream Believer

モロモロの日々

雨が降っても前向きだぜ!『国家代表!?』

『国家代表!?』鑑賞。

今年のしたまちコメディ映画祭でオープニング作品に選ばれ、いとうせいこうが字幕監修を手掛けている韓国映画『国家代表!?』を観ました。監督は『カンナさん大成功です!』のキム・ヨンファ。主役は『チェイサー』の冷酷な殺人鬼役が強烈だったハ・ジョンウです。なるほど!今回はハンマーをスキーストックに持ち替えて女を惨殺するのか!!と思っていましたが、スキージャンプなのでスキーストックは出てきません。というかそもそも青春スポーツ映画です。しかし侮るなかれ!本作『国家代表!?』は韓国映画界で最も権威のある(らしい)大鐘賞と青龍賞において、ポン・ジュノの『母なる証明』とパク・チャヌクの『渇き』を抑えて監督賞を受賞しているそうです!凄い!

1996年、冬季オリンピックをムジュに誘致するためスキージャンプの国家代表チームが急遽作られることになった。誘致委員会からコーチに任命された子供スキー教室の講師パンは早速選手集めを始めるが、スキージャンプ不毛の地、韓国に経験者がいるはずもなく、集まったのは実の母に会いたい、コーチの娘を落としたい、兵役免除など不順な動機を持つ男達だった。長野オリンピックに向けて国家代表チームは練習をするのであるが・・・。

実際に韓国にいるスキージャンプチームを元に作られた映画です。僕が一番この映画で心打たれたのは勝つことを目標にスキージャンプをやっているわけではないところでした。確かにメダルを獲ってマンションを貰いたい・兵役免除されたいという目標があるわけですが、それよりも登場人物たちはスキージャンプを通して、自分を捨てた母親や好きな子や父親などの他人に自分を評価して欲しいという思いが強くありました。劇中にスキージャンプをやる息子が父親に「自分自身の代表にもなれないお前が国家代表になれるわけがない」と叱られるシーンがあります。アメリカ人なのか韓国人なのか分からない男、シャブ中の男、父に叱られてばかりの男。タイトルの国家代表と言うのは韓国の代表ということではなく、自分の人生の代表という意味だと思いました。映画の終盤、長野オリンピックを中継で韓国の多くの人が観ています。しかし韓国でスキージャンプは人気がなく、テレビのスキージャンプ解説者は「メダルは狙えない。国際試合で経験を積むほうが大事だ」と罵倒し、飲みの席ではテレビが点いているのにも関わらず誰も興味を示しません。しかし国家代表チームが順番に飛んでいくにつれていつの間にか解説者や飲みの席での人たちは応援するようになります。自分自身の代表にもなることができない半人前の男達が他人に評価されて一人の人間になっていく姿が感動的でした。

あと雨のシーンの演出も印象的でした。雨のシーンと言えば登場人物たちの悲しみを表現するために用いられるベタな演出方法ですが、それだけには留まっていませんでした。中盤でムジュにオリンピック誘致することに失敗し、スキージャンプチームは長野オリンピック出場が決まっているにも係わらず解散させられます。ここで行き場の失った登場人物たちは悲しみ、それぞれの問題を抱え、雨が降ります。まぁベタっちゃベタなんですよ。ですが登場人物たちはある事に気付きます。雪のない時季のスキージャンプの練習は水を撒かないと滑ることができません。しかし雨が降ったことによって水浸しになり練習ができる!!今自分たちにできることは何よりもスキージャンプの練習だよと。これ悲しみの転換ですよ!お互いに励ましたりすることなく短い時間の演出でネガティブからポジティブに!!ここがとても素晴らしいと思いました。

がしかし146分は少し長く感じてしまいました。なぜかと長く感じたかと言うとスキージャンプのパートと悩むパートの二つがうまく絡んでいなかったからだと思います。母親を探すとかコーチの娘とかいう登場人物の問題を抱えるシーンとスキージャンプの二つの事柄がそんなに関連性がなく、各々のシーンになるとどうしても物語の進みが停滞してしまう印象を受けました。あと実話ベースからの始まりで作られた作品なのでしょうがないのですが、スキージャンプじゃなくても別によくない?と思ってしまいました。生活に対する悩みはあるのですが、スキージャンプに対する悩みとか壁を登場人物が抱えておらず、また練習してうまくなっていくという描写も少なかったです。オリンピック出場もなし崩し的に決まってしまいますしねぇ・・・。スキージャンプに対する愛情がもっとあれば良かった!

とはいえ日本のスポーツ青春映画『ROOKIES』とかよりも俄然しっかりとした映画ですよ!!登場人物の自己満足だけには終わっていません!面白かったです!

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